腸と免疫

「すべての病気は腸から始まる」

古代ギリシアの医者であるヒポクラテスの残した言葉です。 食品には腸管を介した免疫賦活や腸内細菌叢の維持・改善のように、栄養素や機能性成分だけでは説明できないはたらきが多く存在することがわかってきました。

腸管は最大の免疫器官

近年、免疫学において、最も注目されている分野の一つが「腸管免疫」です。 ヒトの腸管には、500種類以上、約100兆個の腸内細菌が生息し、消化されなかった食物繊維などを発酵によって代謝しています。腸内細菌は、一定の構成比を保った腸内細菌叢(腸内フローラ)を形成しており、「もう一つの臓器」と呼ばれることもあります。 最近の研究で、腸内細菌が、腸管における免疫系の成熟(T細胞の分化の完了)や、その機能維持に寄与していることが分かり、その詳細なメカニズムが明らかになってきています。例えば、マウスを使った実験では、腸内細菌の代謝産物の一つである酪酸が、制御性T細胞の分化誘導を促進していることが報告されています。酪酸には、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害作用があることが知られており、酪酸によって、未成熟なT細胞のDNAのうち、制御性T細胞への分化誘導に重要なFoxp3遺伝子領域のヒストンのアセチル化が促進され、遺伝子の発現がオンに切り替わることで制御性T細胞へと分化することが明らかになりました。消化管の慢性炎症であるクローン病や潰瘍性大腸炎は、近年の食生活の欧米化に伴って、日本でも患者数が毎年増加しています。これら炎症性腸疾患の患者の腸内フローラに異常が認められることから、自己免疫抗体検査と合わせて、腸内フローラを調べることによって、発症メカニズムの解明、治療法の確立が期待されています。

腸の働き

・食べ物の消化、吸収 ・異物や病原体から体をまもるバリア機能 ・免疫の司令塔 食べ物の消化は口のなかの唾液から始まり、胃ではタンパク質、その後十二指腸で膵液と胆汁が加わり糖質、タンパク質、脂質が細かく分解されます。腸粘膜から最終的な消化酵素が分泌され腸の吸収の穴を通れるまで細かくして初めて吸収ができるようになります。ですから口から腸までの消化の流れのどこかに問題があると腸の吸収の穴を通れるまで細かくできず、せっかくの栄養が吸収できなくなります。 口から入った異物や病原体といった不要なものは血液中に入っては困ります。腸はこれらを吸収しないバリア機能を持っています。腸のバリアが弱くなると病原性、毒性のある物質が体内へ侵入し影響を及ぼします。 腸には免疫細胞のおよそ70%が集まっています。腸管内に入ってきた病原体を認識し全身の免疫細胞と連絡を取り合って感染に備えています。腸の免疫のバランスがおかしくなると免疫力低下により感染しやすくなります。免疫が過剰になると様々なアレルギーや自己免疫病の原因にもなります。

腸内細菌の働き

・悪性細菌からのバリアの役割 ・食べ物を分解して人間に有用な栄養素を作ってくれる ・免疫の調節 乳酸菌やビフィズス菌を代表とする善玉菌は腸内を酸性に保ち、悪玉菌の増殖を防いでいます。 腸には3つのバリアが存在しその一つ目が善玉菌によるバリアです。二つ目は粘液によるバリア、三つ目は粘膜のとなりあった細胞同士がしっかりとくっつく「タイトジャンクション」というバリアです。このタイトジャンクションが緩むと異物が血液中に入り込む「リーキーガット(腸漏れ)症候群」となり様々なトラブルを起こします。 腸内細菌は食べものからビタミンや神経ホルモンを作ったり、ミネラルの吸収を助けたりします。また水溶性食物繊維からは短鎖脂肪酸を作ります。 腸内細菌が作る短鎖脂肪酸は腸粘膜のエネルギーになったり、免疫の調節をしたり、悪玉菌を抑制します。

腸が原因で起こりうる病気、不調

うつ、不安障害、不眠 高血圧、脂質異常、高尿酸血症などの生活習慣病 脂肪肝、肥満など内臓脂肪増加 アトピー性皮膚炎、花粉症などのアレルギー リウマチなどの自己免疫疾患 認知症 各種がん